2009年11月26日木曜日

制御理論の考え方のススメ

私は、某エンジニアとして、メカトロニクス制御に関わることが多いです。

 詳しい理論は、理工学図書にいろいろありますが、一読された方ならご存知ですが
 とにかく、数学の教科書?と思う位、数学を用いた工学的アプローチを実践された
学問で、一般的に、なんのこっちゃ?と言うように思います。

 私も大学の講座で受講したときは、そんな感じでした。

 「そんなもの人に奨められるの?」 と疑問をもたれないように、次からは一般的な事に
照準を合わせて説明します。

 簡単に言いますと、
「制御とは、狙った場所、速度、力などに対して、もの(あるいは事)を的確に追従するように、目標と現状との差を逐次確認した結果から、物事を操作することです。」

 特に、目標と現状の差から操作する度合いを調整する考え方を、FeedBack制御と言いますし、
予測のみで操作する量を与える考え方を、Feedforward、またはOpen制御と言います。

 日本語の固い制御よりも、英語のcontrol の方が、ピッチャーの投げる球の位置をコントロールする等、よく使われるかもしれません。

 野球の投手の場合は、ボールが手を離れるまでは、ボールの初期位置や初速度、回転などを人間が制御しますが、放たれた後は、物理法則に従い、人間が、遠隔操作で軌道を修正したりすることはできません。
 一球投げる動作だけを考えると、これはOpen制御に近いものです。

 それに対して、体操の平均台倒立や、飛行機の航行は、それぞれ人間や、飛行機の状態を知り、目標位置になるようにバランスしながら運動します。
 これはFeedback制御そのものです。

 当然、人間には重力が、バランスを崩す外乱となりますし、飛行機の航行は、風などの気象によって目標航路からずれるような働きの外乱となります。

 外乱を一回だけ予測して、それに合うように身体やものを操作できる場合もありますが、大概は
脳の加速度を検出する働きや、レーダーや方位磁石の方向と通過位置を、繰り返し確認しては補正操作することで、倒立で長時間バランスを維持できたり、目標航路を辿って飛行することができます。

 Open制御との一番の違いは、常に目標と現状のずれを確認して操作することで、外乱に対して影響を受けにくくなることです。

 このFeedbackの考え方は、一部の工学的アプローチですが、もともと自然物理現象の一部に着目したものでありますので、ひょっとしたら、気象など、時間や場所の過去の情報が原因となって、現在の結果となる、因果律の現象を説明できるのかもしれません。

 何故FeedBack制御を取り上げたかと言いますと、人の生活や仕事の考え方も、FeedBack制御の要素が関連しているのかと考えているからです。

 例えば、一番それらしいものが、経済学の需要と供給のバランスなのかと思います。
 物の貨幣価値は、人の需要と供給のバランスに左右されますし、人間がどうすることもできない、気候変動などの外乱要素によって影響を受けるし、その結果、人間の活動として影響を最小限にするようなアクションがなされるからです。

 もっと一般的なのは、社会人になると仕事の進め方は、PDCAサイクルをまわすといったのが
最も典型でしょう。日本が世界に品質を誇った、トヨタ自動車の「カイゼン」の考え方もその一例だと
理解しております。

 私が病に陥る前は、どちらかと言うと、後ろを振り向かずとにかく前へといった状況でした。
いわば、ある程度ヤマを張った計画と実行をしていたかもしれません。

 でも、今考えるとそれは、火事場の馬鹿力での一発勝負のやり方で、長期戦や、ヤマを外したときのリカバーが難しくなる考え方だと思います。

 私が思うのは、ヤマが外れたから失敗で、それを抱え込んでしまっては何もならないです。
むしろ、失敗からどのところが、目標から外れていたか、どの時点で確認すれば、修正が可能であったか、どのように修正することができたか、また今、目標とのずれをどの程度あり、修正にどうやってアクションをとるかと考える、実践することが重要なのではないでしょうか。

 これをしないと、何度も同じように失敗して信頼を失うかもしれません。

 まさにこれはPDCAサイクルなのです。
 仕事も一日の過ごし方も、振り返る時間を作る。
 時間がなければ、振り返る材料がわかるように、今日の予定と実際やったことを簡単にメモすればよいのだと思います。

 小さなことかもしれませんが、小さな振り返りから得た進歩、それを何年も継続していくと、
地に足の着いたような実力として、大きな進歩につながります。

 ただし、目先のことだけ追っていることを推奨しているわけではありません。
PDCAサイクルは、大きな目標に到達するために、途中の過程を逐次照らし合わせて
アクションをとる手段です。

 結果には必ず原因があるわけですから、ありの目、鳥の目で目標のステップを考えるように
すれば良い訳です。
 途中の過程に到る目標を変えることも有りですし、状況によっては、大きな目標自体も見直すこともありだと思います。

 制御理論にも、目標値のステップ応答という考えがあります。目標値が急激に変化する一番厳しい評価尺度として定義されております。
 これと同様に、現実とかけ離れた大きな目標との差を短時間で埋めようとすると、
自分の行動できる器がかなり広くないと、結果として大雑把なアクションで不安定になります。
 砂漠や沼地に、基礎工事なしで、お城を建てるようなものです。

 最近は、「競争」を印籠の如く結果を、急き立てられることが多くなりました。でもこれはどこまで
やり方として的確なのかは、疑問に思うことがあります。
 むしろ、場当たり的、投げやり的なアクションの結果至上主義で、結果として上手く達成できても、疲労困憊で、長期戦には耐えられないでしょう。

 私が、最近「うつ」が取り正されている背景には、戦略なき手段の中で、時間だけを露骨に圧力かけて追い込むような、仕事の進め方があるのかと思います。
 圧力ではなく、正直ベースの交渉を基に、利害がトレードオフとなる戦略を、両者で考えて進める
のが正しいやり方なのではないでしょうか?

 例えは悪いですが、旧日本軍の竹やりで、米軍戦闘機を打ち落とすようなことを、正当化はできませんが、目先のことしか考えないと、他人事ではなくなりますよ。

 むしろ時間を急ぐならば、目標と手段の過程をより明確にする。
PDCAサイクル期間を細かくすることが、結果として成功の早道になるのかと考えます。

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